論理の変遷と社会的背景の呼応【第2回】(ドライブクラブとの比較)
論理の変遷と社会的背景の呼応【第1回】(レンタカー業者の責任)
前回の記事では、レンタカー関連事業に関する業者の責任の変遷について、時系列を追った。
今回はこの論理変遷をテーブルに乗せて直観的に理解できるように図解していく。
ここまでの判例の流れを、一目で理解できるように図表で整理しました。
| 年次 | 事案 | 裁判所の判断 | 結論 | 意義 | 社会的背景 |
| 昭和39年 | ドライブクラブ | 運行支配なし、 会費収入は運行利益でない | 責任 否定 | 厳格な二元説 | モータリゼーション黎明期、 責任限定志向 |
| 昭和46年 | レンタカー業者 | 契約条件で間接支配、 賃料は運行利益 | 責任 肯定 | 二元説の緩和 | レンタカー普及、 被害者救済要請 |
| 昭和50年 | レンタカー業者 | 契約条件・ 整備責任から支配・ 利益あり | 責任 肯定 | 責任範囲拡張 | 交通事故多発、 救済拡張の社会的要請 |
| 昭和50 年代後半 | 所有者登録名義人など | 支配可能性・ 監督義務で足りる | 責任 肯定 | 一言説・危険性関連説へ | 被害者救済最優先、 判例法の拡張 |
上記、図表をご覧いただくと、昭和50年判決は交通事故多発期に被害者救済を優先するため、運行供用者責任の範囲を拡張したことがわかります。
結論は論理から導かれるのではなく、社会的背景から導かれている。
裁判所は「誰を勝たせるべきか」を社会的要請から決め、その結論に合わせて論理を組み替えているのです。
この構造は、当サイトの「重大な過失はこうしてつくられる【第4回】」と同じ骨格を持っています。
「重大な過失」の記事では、裁判所が社会的要請に応じて事故時のアルコール度数が軽酔未満レベルであるにもかかわらず、重過失判定を結論付けその他の事象はすべて、その結論を補強するために使われる。
今回のレンタカー判例も同じく、被害者救済の必要性に応じて、レンタカー業者に「運行供用者責任」を負わせることを結論付け会費収入と賃料収入の違いを演出、強調し、後付けで結論を補強している。
これらは、裁判所がどちらを勝たせようと先に結論づける、結論先行性があると考えられる。
レンタカー判例と重大な過失判例は、異なるテーマでありながら、裁判所の「結論先行性」という同じ骨格を共有しているのです。
つまり、裁判所は論理から結論を導いているのではなく、社会情勢に応じて結論を選び、そのために論理を組み替えている。
そう考えると、判例の読み方そのものが変わってくるのではないでしょうか。
論理の不整合は、判例法の宿命。
裁判所は政策決定機関ではないため、理屈で社会の要請を後追いするしかないのだ。