論理の変遷と社会的背景の呼応【第3回】(論理の変遷)
論理の変遷と社会的背景の呼応【第1回】(レンタカー業者の責任)
前回の記事では、レンタカー業者に運行供用者責任を認めた判例を記載しました。
次に、今回の判例が最終的にドライブクラブ方式の判例とは異なり、業者の責任を認めたことについて、徹底的に構造比較をしていきます。
まず最初にドライブクラブについて説明します。
会員制で車を貸し出す業者の事。会員は会費を払ってクラブに所属し、必要なときに車を借りる仕組みであった。
レンタカー業者が一般向けに広く車を貸し出すようになると、より柔軟で分かりやすいレンタカーの方が利用者に選ばれるようになった。
ビジネス的には「利用者にとってメリットが薄い」「責任の所在が曖昧」という構造的欠陥があった。
結果として、レンタカー業に吸収されるように消えていった。
レンタカー業の方が合理的で社会的に支持されたため、自然淘汰された形といえる。
ドライブクラブ方式と今回の判例を比較する上で起点となるのは「運行供用者責任」というワードです。
当サイトでもわかりやすく説明しているのでご一読を。
運行供用者責任について深く掘り下げた記事はこちら。
ドライブクラブ案件とレンタカー業者案件の違いは「運行支配・運行利益の有無」にあります。ドライブクラブは会員に車を貸すだけで、業者側に運行の管理や利益が直接帰属しないと認定されたのに対し、レンタカー業者は契約条件や整備責任を通じて運行を間接的に支配し、賃料収入という利益も得ているため、裁判所は責任を認めやすくなったのです。
次に、両者の構造を並べて比較します。結論だけが違うのに、構造は驚くほど似ていることが見えてくるでしょう。
| 区分 | ドライブクラブ | レンタカー業者 |
| 運行支配 | 借主が自由に運転、クラブは関与なし | 契約条件・整備責任で間接的に関与 |
| 運行利益 | 会費収入(運行と直接結びつかない) | 賃料収入(運行そのものから発生) |
| 結論 | 責任否定 | 責任肯定 |
上記図表、結論だけは違うのに、構造が似ていると述べました。具体的に3点ほど上げてみます。
1.両者とも利用者が車を借りている点
2.利用者が運転している点
3.業者が収入を得ている点
しかしながら、裁判所は全く別の結論を出している。
ドライブクラブでは運行供用者責任を否定、レンタカーでは運行供用者責任を肯定しています。
この構造に違和感を感じるのは私だけではないはず・・・。
ここで、新たな問いが立ち上がります。
結論先行で後から論理構築をしているのではないか?というものです。
この考察を含めて、改めて図表を提示します。
| 観点 | ドライブクラブ判例 (昭和39年) | レンタカー判例 (昭和50年) | コメント |
| 契約形態 | 会員制。会費を払って所属し、必要時に車を借りる | 賃貸借契約。免許確認・行先指定・賃料前払い | どちらも「利用者が車を借りる」点では同じ構造 |
| 運行支配 | クラブは会員の運転を制御できない → 支配なし | 業者は契約条件や整備責任を負う → 支配あり | 実質的にはどちらも「直接運転は利用者」なのに結論が分かれる |
| 運行利益 | 会費収入は「所属権利の対価」であり運行利益ではない | 賃料は走行距離・時間に応じて徴収 → 運行利益あり | 会費も賃料も「車利用から得られる収入」なのに、裁判所は片方を否定、片方を肯定 |
| 結論 | 運行供用者責任を否定 | 運行供用者責任を肯定 | 構造は似ているのに結論は真逆 |
| 不自然さ | 利用者から見れば「車を借りる仕組み」としてはほぼ同じなのに、裁判所は違う結論を導いた | → 結論先行で論理を組み替えているのでは? |
会費収入と賃料収入の違いは本当に構造的な差なのか、それとも裁判所が結論を導くための方便なのか?
そしてなぜ、裁判所は両者の結論を変える必要があったのか?
次回は、この問いをさらに深掘りし、時系列で判例を追いながら「論理の変遷と社会的背景の呼応」を明らかにしていきます。