正しさは、誰かが決めるものじゃない。あなたが選んだ、それが答え。

制度の継ぎ目に落ちるな ― 人身傷害保険は“骨の補強材”である【第3回】

あなたの“選択の日”のために

補償の「空白地帯」を埋める作用1

(以下、代表的なケースを3つ上げます)

無保険車事故の補償ギャップと特約対応

日本国内の任意保険加入率は2025年時点で約75〜88%とされる一方、10台に1台、あるいは地域によっては4台に1台が未加入というエリアも存在します。不幸にも事故の相手が「無保険」だった場合、被害者は自賠責基準の最低限しか補償されず、物損や自分の過失分はカバーされません。
特に

  • 相手に支払い能力がない(低所得・経済的困窮等)
  • 相手が自賠責すら未加入(多いのは車検切れ等)
  • 相手がひき逃げ等で不明

の場合、被害者は公的救済制度(政府保障事業)に頼るしかありませんが、この場合も全額がカバーされるとは限らず、支払いまでの遅延や過失相殺による減額が発生しやすいです。

制度設計上の補強材:

  • 「無保険車傷害特約」…相手が無保険車だった場合に、自分と家族の後遺障害・死亡分を補償(補償上限2億円等が多い)
  • 「人身傷害補償保険」…相手が保険未加入、補償が限度額を超える場合、実損額を自己保険で迅速に受け取れる
  • 「政府保障事業」…最終的な公的救済(自賠責基準の支払限度額まで)

分析:

自賠責(強制)と無保険車傷害・人身傷害保険の三層構造は、「ギャップが生じる空白地帯」の埋め合わせとして設計されている。しかしダイレクト型ではこれらを外してしまう契約者が一定数存在し、事故時に被害者救済が不十分となり、経済的二次被害が顕在化するリスクが大きいのです。

過失相殺による賠償減額リスク

過失相殺とは、加害者だけでなく被害者にも事故原因としての落ち度(過失)がある場合に、被害者に支払われる損害賠償をその分減額する仕組みです。

例えば、加害者8割:被害者2割の過失割合ならば、被害者が本来受け取れる賠償金は損害額の80%までしか認められません。

特に注意したいのは、自賠責保険では被害者の過失が7割未満なら減額されませんが、民間の任意保険会社(対人賠償保険など)では過失相殺による減額が厳格に実施されることです。

・ 【実務例】

交差点事故で相手(加害者)8割、被害者2割の過失。治療費・逸失利益なども20%減額されるため、十分な生活再建資金を得られず不安定状態に陥る例が多いです。

制度設計上の補強材:

・ 「人身傷害保険」…過失割合に関係なく損害額全額(設定限度まで)補償。自分側の過失分も控除されず、経済的損失が生じない。

分析:

保険加入時に「過失相殺でどの程度減額されうるか」という詳細をきちんと説明されていない場合、特にダイレクト型契約で人身傷害保険の未加入だと、過失分減額により生活再建に大きな支障が生じやすい。

人身傷害保険は、まさにこの“減額リスク”という補償の継ぎ目を埋める骨としての制度的意味を備えています。

自損事故(単独事故)と車両保険の限界

自損事故(単独事故)は、たとえば「ブレーキの踏み間違い」「運転ミスでのガードレール衝突」など運転者だけが当事者となる事故です。この場合、自分のケガや死亡に対して自賠責保険は適用されません。

実際のリスク:

・ 単独事故で大けが、長期入院が必要、しかし自賠責でカバーされず全額自己負担になる

・ 同乗者は自賠責対象となるが、運転者本人=契約者には適用されない場合がほとんど。

自分のクルマの修理費用は「車両保険(一般型)」で補えるケースがあるが、いざ使うと等級が3つ下がり、翌年から保険料が大幅に上がる(“3等級ダウン事故”)。しかも「エコノミー型車両保険」では自損事故は補償外であるため、補償を十分に受けられない場合も。

制度設計上の補強材:

・ 「人身傷害保険」…自損事故で運転者本人が死傷した場合でも、限度額まで実費補償(治療・収入減等)。

分析:

ダイレクト型で人身傷害保険を契約し忘れていると、最も「想定外」の負担増リスク=補償欠損に陥りやすい典型例。保険の全体像を地図化した場合、この自損事故こそ空白地帯となりがちです。

保険の話ばかりじゃ疲れますよね。かつて猫と暮らし、2.7万人と語り合った日々もありました。よかったら、そちらものぞいてみてください。

律空
この記事を書いた人
保険業界での経験を活かしながら、現在は別業界の会社員として働いています。 守秘義務を大切にしつつ、あなたにとって本当に役立つ情報を、ゆっくりと丁寧に届けていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

PAGE TOP