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ダイレクト型(ネット型)自動車保険は、その手続きの手軽さやリーズナブルな保険料が大きな魅力とされ、近年加入者を増やしています。保険代理店を介さずに、インターネットや電話、郵送で契約手続きを完結できるため、従来の代理店型と比べて中間コストが抑えられています。その分、保険料が安い傾向にあり、インターネット割引や証券不発行割引といった独自の割引制度を用意する保険会社も多く見られます。
しかし、ダイレクト型自動車保険には、契約者が「自分で補償内容やオプションを選択できる」自由設計型であるがゆえの制度的なリスクが潜んでいます。初心者でも分かりやすい資料やチャットサポートが整備されているものの、保険の素人が完全に自力で最適なプランを組み立てるのは難しい場合も多いでしょう。特に、大きなリスクのひとつが「知らぬ間に、存在すら知らずに重要な補償を外してしまうこと」です。代理店型であれば担当者がヒアリングし、家族構成やライフプラン、運転歴などを考慮して補償内容を提案してくれるため、契約者自身が気付かずに生じる補償の“空白地帯”をカバーする仕組みが機能しています。
ダイレクト型自動車保険に特有な構造的リスクを考える際、主に3つのポイントが挙げられます。
・ 契約者の自己責任による設計ミス:
契約者が自ら補償範囲や特約を選択するため、知識不足や認識不足により重要な補償(例:人身傷害保険や無保険車傷害特約など)をつけ忘れたり、十分な補償内容が設計できない事例が多発しています。
・ 事故時の不安とサポート不足:
代理店型であれば対面相談や事故後の生活再建についても助言が受けられるのに対し、ダイレクト型では事故時に誰に相談すればよいか分からず、不安が増幅しやすい傾向があります。
・ 補償の空白を見落としやすい:
各種特約や補償内容は保険会社ごとに異なり、同じ項目名でも実際の補償範囲や免責条件が異なることも多い。短絡的に「安い・ネット型で十分」と判断してしまうと、知らぬ間にリスクが可視化されない「空白地帯」が生まれやすくなります。
さらに、制度設計の観点から見ると、自由設計型保険商品の普及により「補償の空白地帯」の存在は保険行政側からも重大な課題として認識されています。契約者が補償内容を十分に理解しないまま契約し、実際に事故が発生した際に必要な補償が得られない事態を防ぐため、保険会社には補償内容の説明責任と、補償の継ぎ目を埋める商品設計が求められるのです。
「補償の空白地帯」とは、法制度、保険商品、運用実務の継ぎ目・接合部で生じる“補償の谷間”を指します。具体的には
・ 無保険車事故(相手に賠償能力がない/特約未加入)
・ 過失割合による賠償減額(過失相殺の壁)
・ 自損事故(単独事故・自賠責の非適用)
・ 示談未成立(相手が無保険ないし交渉困難)
・ 歩行中や自転車運転中の家族の事故(特約なしで不補償)
といった、制度上必ずしもすべてのケースで十分な補償が“カバーされない”現象を意味します。これらの「空白地帯」は、ネット型の自由設計市場拡大と裏腹の存在だと言えるでしょう。