2025年10月27日
「おとなの自動車保険」。このフレーズは、テレビCMや交通広告のなかでしばしば目にする。その響きは、40代・50代といった「おとな」世代が自動車保険選びで“得をする”“安くなる”という、親しみや希望を喚起させるものだ。「大人になれば保険料が安くなる」「事故率が低いからこその価格」といったニュアンスを、タレントやキャラクターが柔らかく演出しているケースも多い。実際、セゾン自動車火災保険(現SOMPOダイレクト)による「おとなの自動車保険」CMシリーズでは、俳優・松田龍平さんが「おとなの自動車保“犬”」として、不安を取り除きながら“納得の保険料”を訴える演出もあった。
しかし、キャッチコピーが消費者にもたらす「自分はおとなだから安い」という無条件な期待は、本当に合理的か。保険商品の多様化やデジタル化とともに、選択肢は増え、条件ごとの違いも顕著に可視化されるようになっている。その一方で、商品設計や料率の「骨」は案外、シンプルかつドライで、広告表現と制度設計の間に微妙な乖離がある。本稿では、広告の“顔”である印象と、料率制度や統計根拠といった“骨”とのギャップをあくまで事実に即して淡々と列挙し、その乖離を冷静に読み解くことを目指す。