
2025年9月16日
水は、すべてを平等に沈める。
だが、制度は沈んだあとに差をつける。
地下駐車場で水没した車たちは、見た目こそ同じように泥にまみれていた。
けれどその後の生活再建には、契約書の一行が決定的な分岐を生んだ。
自賠責保険:人身のみを守る制度
– 強制加入だが、車両損害は一切補償されない
– 水没しても、車の修理費・買い替え費用は対象外
– つまり、車が沈んでも制度は沈黙する
任意保険:対人・対物だけでは足りない
– 多くの人が加入しているが、車両保険なしでは自分の車は守れない
– 対人・対物は「他人の損害」にしか使えない
– 水没は「自分の損害」なので、車両保険がなければ補償ゼロ
車両保険(一般型):唯一の“浮き輪”
– オールリスク型なら、水災による全損も補償対象
– 契約時に設定した車両価額まで満額支払われる可能性あり
– ただし、免責金額・等級ダウン・事故あり係数などの“代償”もある
地下駐車場の“見えないリスク”
– 保険契約時に「地下に停めている」と申告する義務は通常ない
– だが、地下は構造的に水没リスクが高い
– にもかかわらず、制度はそのリスクを契約者に委ねている
契約書に書かれていないリスク。
制度が沈黙している部分にこそ、生活者の“沈む可能性”が潜んでいる。
次項では、実際に車両保険の有無でどれほどの金額差が生まれるのか──
その“沈むか、浮かぶか”の分岐点を具体的に見ていこう。