
2025年9月16日
都市の合理性は、時に静かに沈む。
雨が降る。地下に車を停める。何も特別なことではない。
けれどその日、三重県四日市市では、駅前の地下駐車場に停められていた約300台の車が、
まるで都市の記憶ごと水に沈められるように、天井まで浸水した。
水は、契約書を読まない。
だが制度は、読んでいない者に冷たい。
自賠責は人身しか守らない。任意保険も、車両保険がなければ沈黙する。
地下に停めたその瞬間、補償の境界線はすでに沈んでいたのかもしれない。
この都市型水害は、単なる災害ではない。
それは、制度の“見えない冷たさ”が生活者に突きつけた、静かな罠だった。
三重県四日市市では、9月12日の夜に観測史上最大の1時間雨量123.5ミリが記録され、
駅前の地下駐車場「くすの木パーキング」が完全水没した。
地下2階は天井まで浸かり、地下1階も約1メートルの浸水。
結果的に約280〜300台の車が被害を受けたと報じられている。
しかも、車が「浮いて流されて、だんご状になっていた」という証言もあり、
現場はまるで水中のジャンクヤードのような様相を呈していた。
排水作業は夜通し続けられ、ようやく完了の見込み。
だが、レッカーでの引き上げ、保険対応、生活再建──本当の戦いはこれから始まる。