


【保険会社が主張するすり替えロジック】

実際に、自動車事故が起きた場合、法的な部分では、当事者側と相手側で交渉をしていくことになります。
基本的には双方自動車保険に加入していることが多いので、自動車保険の事故担当者が契約者の代理人として相手方と交渉していきます。
その交渉の中で重要になってくるのが、過失割合というものです。
過失割合は端的にいうと「事故における責任の割合を数値で示したもの。」です。
例えば、あなたが赤信号を無視した相手に衝突された場合、相手が100%悪いとされるなら「過失割合は0:100」となります。この数字が、保険金の支払いや示談交渉の土台になります。
これを交渉の中で決めていきます。
基準とするものは過去の裁判例で、事故状況により若干修正がなされます。
状況により、自分が直接相手方保険会社の事故担当者と交渉をしなければならない場合がありますが、保険会社が提示してくる過失割合は一方的なものであることもあります。相手方の過失割合が低ければ、その保険会社のロスが減るので当然といえば当然ですね。出費は少ないほうがいいですから。
そして、この過失割合ですが、警察は一切関与しません。飽くまで、当事者同士で話し合って合意を形成していくものです。
過失割合は、過去の裁判例でも、事故の類型である程度は定型化されています。
それぞれに「基本過失割合」が設定されています。詳細は、「別冊判例タイムズ38号」をご覧ください。
事故類型の例:
交差点での直進車同士の出会い頭事故
右折車と直進車の事故
追突事故
車線変更事故
駐車場内の事故
歩行者との事故
基本過失割合の例:
信号なし交差点での優先道路 vs 非優先道路 → 10:90
追突事故 → 原則として後続車が100%
修正要素の例:
夜間・雨天・児童・集団横断・脇見運転・飲酒など
→ 基本割合に±5〜20%の修正が加えられることも
上記のように過失割合によって、出費する金額が異なるため、
事故状況に関して双方の証言が食い違うことは、よくあることです。
だからこそ、機械が記録する“事実が”重みをもってきます。
こういったことを背景として、現代ではドライブレコーダーを備え付ける車両が増えております。
また、過失割合について、一点、あまり語られていない、よく誤解されていることがあります。
それは、自車側に過失がない場合、自社側の保険会社はなにもしないということです。
一見すると「なぜ助けてくれないのか」と感じるかもしれませんが、これは保険制度の構造上、仕方のないことなのです。
この“何もしない”という制度の仕組みと、その意味については、次の記事でじっくり掘り下げていきます。