正しさは、誰かが決めるものじゃない。あなたが選んだ、それが答え。

元請・下請問題━━“骨の民主化”への道【第4回】(元請け業者の企み)

あなたの“選択の日”のために

前回の記事では今回の判例の中心となる契約である請負契約について解説しました。請負契約では、本来は、元請け業者は下請け業者が発生させた事故に関して民法716条により損害賠償義務を負わないと説明しました。

今回は、元請け業者が民法716条を盾にして、どのように責任を回避しようとするか──その構造を読み解いていきます。

Y2のような零細業者が苦しむ構造

・ 下請業者は資本力が乏しく、事故時の賠償能力が低い

・ 元請業者は契約構造で責任を回避しつつ、利益を得ている

・ 被害者救済の観点から、裁判所は「危険責任の理念」で元請に責任を認める傾向

  →これは「契約構造が倫理的に限界を迎えたとき、判例が骨を再設計する」瞬間

Y2を救ったこの判例は、契約構造の限界を超えて、責任の骨を再配分した記録です。

・ 本来の請負契約では、Y1は責任を負わない構造

・ しかし、Y2のような零細業者が苦しむ現実に対し、裁判所は「事実の骨」でY1に責任を認定

・ これは「契約の骨を超えて、社会の骨を守る」判例的営み

下請への責任集中

契約構造によって責任が下請・個人事業者に集中しやすい業界は、運送・建設・製造・IT・メディアなどが代表的です。特に“請負型”“成果物納品型”の契約が主流な業界では、元請が責任を回避しやすく、下請がリスクを背負いやすい構造になっています。

契約構造による責任集中マップ(業界別)

業界主な契約構造責任集中の傾向備考
運送業傭車契約・請負契約下請け業者の事故責任が集中多重下請構造が常態化
建設業請負契約下請・孫請に施工ミス・自己責任が集中元請は契約上責任回避しやすい
製造業部品供給契約・OEM下請けに品質・納期責任が集中系列構造で支配されるが責任は分離
IT業界業務委託契約・準委任フリーランスに成果責任が集中契約曖昧だとトラブル多発
メディア制作制作委託契約制作者に著作権・納期・炎上リスクが集中元請は表に出ず責任回避
研究開発共同研究契約・成果報酬型下請研究者に成果義務が集中成果が出ないと報酬ゼロの構造

責任集中を生む契約構造の特徴

成果物納品型:成果が出なければ報酬なし(請負型)

指揮命令が曖昧:準委任と請負の境界が不明確

・ 契約書に責任分担が明記されていない

・ 元請が契約上の責任を回避できる構造

  →これらの構造が、Y2のような零細業者に責任を押し付ける温床になる

契約構造は“責任の骨格”を決める

・ 責任が集中する業界は、契約の骨が“元請に都合よく設計されている”

・ 判例はその骨を読み直し、社会的再配分を試みる

今回の判例では、表向きは請負構造でしたが、
実務ではこの構造が“さらに歪んだ形”で使われます。
それが偽装請負です。

偽装請負の問題点

元請業者の企みとして、偽装請負の問題点についても触れておきたいと思います。

実務上では“請負契約なのに指揮命令をしている”ケースが多数存在し、「偽装請負」として違法とされる可能性があります。

特に、下請けが契約の骨を読めない・読んでいない状況に付け込む形で、元請が実質的な指揮監督を行う構造は、法的にも倫理的にも問題視されています。

請負契約における指揮命令の原則

・ 請負契約は「成果物の完成」に責任を負う契約であり、請負人は独立して業務を遂行する立場

・ よって、注文者(元請)は請負人(下請)に対して直接的な指揮命令をしてはならない

・ 指揮命令を行うと、労働者派遣契約とみなされる可能性があり、「偽装請負」として違法になることもある

偽装請負と判断される典型的な構造

・ 元請が下請の作業員に直接業務指示を出す

・ 元請が現場に常駐し、日々の業務を監督する

・ 元請が報酬や勤務時間を実質的に管理する

・ 下請が契約内容を理解しておらず、実質的に従属している

→これらは、契約上は請負でも、実態が雇用的支配になっているため、違法とされる可能性が高い。

契約の骨が読めないと、支配の骨がすり替えられる

・ 元請は「請負契約だから責任はない」と言いながら、実務では指揮命令をしている

・ 下請は契約の骨を読めず、支配されるだけの構造に置かれる

・ これは「契約の骨の非対称性」が生む構造的弱者の典型

契約の骨が読めないと、責任の骨もすり替えられる

・ 請負契約は本来、独立性が前提

・ しかし、契約の骨を読めない下請に対して、元請が支配を強めると、構造的に偽装請負が起こる

・ だからこそ、“契約翻訳AI”が必要になる。契約の骨を読めるようにすることで、支配の骨のすり替えを防ぐ

契約翻訳AIによる“骨の民主化”への道

請負契約は本来、注文者、請負人双方ともに契約内容をきちんと理解したうえで締結されるのが理想です。

しかし、契約の骨を読めない下請に対して、元請が支配を強めると、構造的に偽装請負が起こり、すべての責任が零細業者に集中します。

偽装請負のような“骨のすり替え”を防ぐには、
契約の骨を誰でも読めるようにすることが不可欠です。
そのために、次回扱う「契約翻訳AI」が意味を持ちます。

契約の骨を読めるようになること──それが、構造的弱者を救う第一歩です。

保険の話ばかりじゃ疲れますよね。かつて猫と暮らし、2.7万人と語り合った日々もありました。よかったら、そちらものぞいてみてください。

律空
この記事を書いた人
保険業界での経験を活かしながら、現在は別業界の会社員として働いています。 守秘義務を大切にしつつ、あなたにとって本当に役立つ情報を、ゆっくりと丁寧に届けていきます。

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