論理の変遷と社会的背景の呼応【第3回】(論理の変遷)
論理の変遷と社会的背景の呼応【第2回】(ドライブクラブとの比較)
今回の判例は、表からは見えにくい“二重構造”を持っています。
そこでまず、裁判の全体構造――表の争点と裏の力学――を整理しておきましょう。
この判例は表向きは「Y1・Y2 vs 被害者遺族」の損害賠償請求事件ですが、構造的には「Y1 vs Y2」の責任分担・帰属の戦いでもあります。
つまり、“誰が運行供用者か”という問いは、被害者に対する責任だけでなく、Y1とY2の間の責任の押し付け合いでもあります。
運行供用者責任については、こちらの記事でがっつり掘ってます。
・ 被害者遺族が損害賠償を請求
・ 加害車両はY2所有・運転手もY2所属
・ 運行表・荷積み指示・報酬分配などはY1が主導
・ 「加害車両はY2の所有で、運転手もY2の社員。うちは請負契約で依頼しただけ」
・ 「運行供用者はY2であり、責任はY2にあるべき」
→Y1は“契約の骨”を盾にして、責任を回避しようとする構造
・ 「うちはY1の運行表に従って動いていた。Y1の指揮監督のもとで業務を遂行した」
・ 「運行支配はY1にあり、責任はY1にあるべき」
→Y2は“事実の骨”を盾にして、責任を押し返そうとする構造
・ 契約の骨:請負的(Y2が独立業者)
・ 事実の骨:Y1が運行支配・指揮監督・報酬分配をしていた
・ 結論:Y1にも運行供用者責任を認める
→これは「Y1とY2の骨のズレを裁判所が再配分した」構造的判断
この判例は、“被害者救済”という表の構造の裏で、契約の骨と支配の骨がズレたとき、裁判所がどう責任を再配分するかを示した記録です。
表向きは「Y1・Y2 vs 遺族」の損害賠償事件。
でも、その奥には「Y1 vs Y2」の責任の骨格争いが潜んでいました。
契約書に書かれた責任(請負)と、現実の支配構造(運行指示・報酬分配)がズレたとき、
裁判所は“構造的責任”を読み直し、再設計したのです。
次回は、この「契約の骨」――請負契約とは何か? という問いから、
契約の建前が現実の支配をどう覆い隠すのかというズレをさらに深掘りしていきます。
骨は、契約にも宿る。
でも、読めなければ、責任はすり抜ける。