正しさは、誰かが決めるものじゃない。あなたが選んだ、それが答え。

制度の継ぎ目に落ちるな ― 人身傷害保険は“骨の補強材”である【第4回】

あなたの“選択の日”のために

補償の「空白地帯」を埋める作用2

(以下、さらに代表的なケース3つを紹介します。)

示談未成立時の補償不確実性

事故後、相手方が無保険で示談交渉が必要になった際、任意保険に加入していれば保険会社が交渉を代行してくれますが、無保険車となると保険会社が動かず自分で交渉せざるを得ません。また、過失割合の争いや賠償額算定で折り合いがつかず、なかなか補償が得られない場合も珍しくありません。

・ 相手が全く応じず、経済的補償が滞る

・ 慰謝料・治療費の基準(自賠責、任意保険、弁護士基準等)に大きな差があり、訴訟やADRを経ないと遅延・減額リスクが高まる

・ 最終的に裁判となった場合も、自分だけで手続き・立証責任を負わなければならない

制度設計上の補強材:

・ 「人身傷害保険」…示談成立前から実損分を先払い可能。他人との争いの成否にかかわらず、直ちに医療・生活資金を確保できる。

・ 「弁護士費用特約」…弁護士費用や法律相談費をカバーし、専門家のサポートで示談交渉を有利に進められる。

分析:

このケースもダイレクト型で人身傷害保険を外していた場合、最も大きな補償の「谷間」に落ちる危険性が高いと言えます。

※みのりさんのnote記事では「事故後に補償が受けられず困った」という実例が紹介されていますが、本稿はこれを“構造的にどう埋めるか”を強調します。

家族の歩行中事故と保険適用範囲

現代のライフスタイルでは、家族が歩行中や自転車に乗っている際に自動車事故の被害に遭うケースも増加しています。

注意点:

・ 通常の人身傷害保険は「車内(契約車両搭乗中)での事故のみ」をカバーするタイプが多いが、近年は歩行中・自転車搭乗中等の車外事故まで拡張できる商品も増えています。

・ ただし、車外補償型にしないと「家族の歩行中事故」は補償の空白地帯となる

・ 対歩行者等傷害特約や「ファミリー型」人身傷害保険など、一部の保険でしかカバーできないケースもある。

制度設計上の補強材:

・ 「人身傷害保険(車外補償型)」…家族・同居親族の歩行中事故・自転車事故等にも適用可(保険料アップの反面、生活リスクを大きく減らせる)。

分析:

家族全体のリスク管理という観点からは「契約車両搭乗のみ」を選択した場合に大きなギャップが生じやすい。補償範囲を広げることで、“生活の骨”としての保険機能が盤石になります。

ノーカウント事故という“語られない安心”

等級ダウン事故やカウント事故と異なり、人身傷害保険や搭乗者傷害保険、弁護士費用特約等の一部支払いは“ノーカウント事故”扱いとして、保険の等級(ノンフリート等級)や保険料割引に影響がありません。

ノーカウント事故の仕組みとメリット

・ 保険を使っても翌年度の等級に影響しない(通常どおり1等級アップ)

・ 「事故有係数」も加算されず、保険料が割高になるリスクなし

・ 人身傷害保険(同乗者含む)のみを利用したとき、自分や家族への補償に安心して使えるため、“使わなきゃ損”の補償設計となっています。

ノーカウント事故の主な該当補償・特約

補償・特約内容
人身傷害保険運転者・家族同乗者のケガ・死亡補償
無保険車傷害特約無保険車との重大事故(死亡・後遺障害)を補償
搭乗者傷害特約入通院の定額支払い等
弁護士費用特約交渉代行の費用を補償
ファミリーバイク特約軽二輪車等の事故における対人・対物補償
個人賠償責任特約日常事故(自転車等で他人に損害を与えた場合)の補償

これらの補償はいずれも「自身・家族」の身体損害等を主眼にしているため、事故の責任・過失にかかわらず等級が守られる。

カウント事故と比較した安心構造

事故の種類等級への影響
3等級ダウン保険料大幅アップ対人・対物賠償保険の使用、車両保険使用
1等級ダウン保険料ややアップ盗難、自然災害の車両保険使用
ノーカウント等級に影響なし人身傷害保険、弁護士特約、搭乗者傷害等

ノーカウント事故の制度設計は「身体や生活の安全の復旧は、ペナルティなしで守られるべき」という理念の反映とも言えます。

保険の話ばかりじゃ疲れますよね。かつて猫と暮らし、2.7万人と語り合った日々もありました。よかったら、そちらものぞいてみてください。

律空
この記事を書いた人
保険業界での経験を活かしながら、現在は別業界の会社員として働いています。 守秘義務を大切にしつつ、あなたにとって本当に役立つ情報を、ゆっくりと丁寧に届けていきます。

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