正しさは、誰かが決めるものじゃない。あなたが選んだ、それが答え。

「おとなの自動車保険」広告コピーと現実の保険料構造の乖離【第5回】──事実ベースで“顔”と“骨”の差を淡々と見つめる

あなたの“選択の日”のために

広告コピーと制度の骨格──統計・補償設計・料金構造の冷静な観察

「おとな」=「安くなる」は制度設計の帰結にすぎない

広告コピーで「おとなは安い」というフレーズは広くみられるが、冷静に統計・設計論に戻れば当然の帰結であり、個々の会社だけの独自性や「抜け駆け」ではない。「事故率が最も低い35歳以上を中心に料率が下がる」「多くの会社で同様の料率適用」という骨組みは本質的に全社(代理店型を含む)で共通である。

他社と「おとなの自動車保険」:年齢別料率の比較

会社名年齢条件区分割安となるゾーンダイレクト型か
ソニー損保30歳以上区間30歳~高齢層
アクサダイレクト30歳以上区間30歳~高齢層
SONPOダイレクト35歳以上区間35歳~高齢層〇(おとなの自動車保険)
三井ダイレクト35歳以上区間35歳~高齢層
損保ジャパン35歳以上区間35歳~高齢層×(代理店型メイン)
東京海上日動35歳以上区間35歳~高齢層×(代理店型)

いずれも、事故率・等級上昇・走行距離の短縮が重なり「おとなが安い」のは業界横断現象。

具体的な保険料内訳とその事実

年間保険料の内訳を見ると、純保険料(リスクベースの原価部分)はどの会社も大差がない。違いが現れるのは付加保険料(代理店型で高い/ダイレクト型で低い)によるものであり、「安い」の理由も合理的で透明である。

項目内容・役割
純保険料事故リスク・統計に基づき全社共通
付加保険料代理店報酬・人件費・広告費など
等級制度20等級まで進むと最大63%割引
年齢特約21/26/30/35歳以上区分で最大50%割引
型式料率車両ごとの事故実績で毎年見直し

コピーと現実との錯綜──「本人限定」や「家族限定」の運用、家族構成等で変化

「40代・50代が必ず安い」と煽る広告は、家族構成や利用区分(全年齢補償・本人限定・家族限定など)によって大きな差が生じる現実にあまり触れていない。実際には「本人・配偶者限定」であれば保険料は著しく安いが、同居の子ども(20代前半など)がたまに運転、となると保険料は急激に跳ね上がるため、家庭環境によってコピー通りにならないケースが出てくる。

広告規制・禁止表示と開示基準

生命保険協会、日本損害保険協会などの業界ガイドラインおよび保険業法、景品表示法は、広告表示の適正・透明性を強く求めている。特定年齢層向けの保険料や割引をあたかも“すべての契約者が対象”であるかのように表示することは、明確に「有利誤認表示」に該当する。

・ 例)若年層向けの保険料例を本人や全契約者対象であるかのように見せる

・ 前提条件(年齢・運転条件・等級など)は明瞭に表示しなければならない

実際、多くのCMやウェブ広告は“小さな文字”や別画面で注意書きを掲出しているが、視認性・可読性の要件(文字サイズ・色・表示時間の十分さ)もガイドラインで細かく規定されている。

保険の話ばかりじゃ疲れますよね。かつて猫と暮らし、2.7万人と語り合った日々もありました。よかったら、そちらものぞいてみてください。

律空
この記事を書いた人
保険業界での経験を活かしながら、現在は別業界の会社員として働いています。 守秘義務を大切にしつつ、あなたにとって本当に役立つ情報を、ゆっくりと丁寧に届けていきます。

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