
2025年9月3日
ある日、助手席に座っていただけの青年が、突然命を奪われた。
原因は、山から落ちてきた直径1メートルの岩。
場所は、高知県の国道。道幅6メートルの砂利道。崖の上は、長年の風化で脆くなっていた。
裁判で、国と県はこう主張した。
「落石なんて、どこにでもある。完全に防ぐのは無理だ。」
でも、裁判所はこう語った。
「竹竿に赤い布をつけただけでは、命は守れない。
この道路は、安全性を欠いていた。
国家は、過失がなくても責任を負うべきだ。」
──この判例を読んだとき、少しだけ意外だった。
国が「自分は悪くない」と言って争っていること。
守ってくれるはずの存在が、突然“敵”になることがあるということ。
私たちは、制度に守られていると思っている。
でも、制度は万能じゃない。
予算や技術の限界を理由に、命の価値が後回しにされることもある。
そして、何も悪くない国民が、突然「争う相手」として扱われることもある。
このシリーズでは、そんな「制度の向こう側」を静かに見つめていきます。
判例、制度、日常の出来事──その一つひとつに、国家と個人の距離感がにじんでいる。
問いかけたいのは、ただ一つ。
あなたは、制度に守られる側であり続けられるだろうか?